まぐろ博士
マグロについて
従業員作成
今回は数年前にお会いした「まぐろ博士」との思い出を述べさせていただきます。
様々な方にご縁を頂き、あるファミリーイベントのアテンド役を任されたことがあります。
何台かのバスでとある漁業が盛んな街を巡り、様々な催し事を行う家族向けのイベントでした。
その中の一つのイベントとして、「マグロ漁船が獲ってきた魚を間近で見よう」的なコーナーがあり、アテンド役の中でまぐろを知っていた私が解説役に指名されました。
生マグロを取り扱う仕事をしたことがある私は、まずは持つ時の注意点など、普通に生活している方々には不要な情報の提供から始め場を和ませ、展示品が「びんちょうまぐろ」であったことから、地域ごとの呼び名の違い、名前の由来、味の特徴など、知っている情報を子供の表情を見ながら、専門用語を極力使わずに解説しました。
最後に質問に答えて終わろうといくつかの質問に答えていた中、ある少年から真剣な眼差しで、衝撃的な質問をされました。
「まぐろの中で一番泳ぐのが速いまぐろは何か知っていますか?」
いやいや、質問と言うよりクイズですし。
えっこれって出題者の立場が入れ替わっているし。
と、少し面白くなったので笑って突っ込みを入れようかと思いましたが、何より彼の真剣な眼差し、それまで最前列でメモを取りながら何度もうなずいてくれていた彼に、笑いや知りませんでは失礼だとすぐに察しました。
「私は子供のころから本などの字を覚える事が苦手だったので、今日は触ったり食べたり見たり、私が経験してきたことをお話しました。ですので、泳ぐ速度のデータは記憶しておりませんが、まぐろの身は筋肉であると考えると、比較的大きな個体が多いクロマグロ(本鮪)だと思います」
と、真剣に考えて回答したところ、彼は何度もゆっくり大きくうなずいてくれました。
私は少し楽しくなったので
「でもさぁ。まぐろの仲間で考えるとクロカワカジキも、めちゃ早そうじゃない?あの魚の形は絶対泳ぐのは速いよ。メカジキの形は良いけどちょっとメタボ気味だからたぶんクロカワカジキが速いと思うよ」
と、続けて話しかけるやっと小学生らしいリアクションで笑ってくれました。
緊張し続けた中で多くの方たちとお会いしたあの日、あまり覚えていることは少ないですが、「まぐろ博士」の彼とのやり取りは一生忘れないでしょう。
興味があることに対する姿勢と、多角的な視点の大切さを思い出し、今日からまた日々の業務に励んでまいります。